今回は、2026年5月24日から5月30日までに確認できたMI関連トピックをまとめます。 今週は Matlantis の AI エージェント連携機能の発表に加え、材料計算や材料機械学習の実務で使うOSS更新も続きました。研究・論文、ツール更新、直近のイベント情報に分けて整理します。
今週の要点
- Matlantis は 2026年5月27日、AI エージェント連携機能の提供開始を発表しました。自然言語でシミュレーションコード生成や編集を進める方向を、製品機能として前面に出した発表です。
- CMU と UPenn のチームは 2026年5月26日公開の記事で、熱力学法則を満たす AI 粗視化モデルを紹介しました。PyTorch と LAMMPS 実装も公開されており、polymer informatics や coarse-graining の実務に近い話題です。
OpenAaaSとLuminaの arXiv preprint は、材料MIの実行基盤とデータ基盤をそれぞれ扱っています。どちらも「モデル単体」ではなく、研究基盤の組み方に重心がある点が特徴です。matglは 2026年5月24日にv4.0.0、5月26日にv4.0.1を公開しました。PyTorch Geometric 系への一本化と、中間特徴の取り回し改善が今週の大きな更新点です。
研究・論文
CMU / UPenn: 熱力学法則を満たす AI 粗視化モデル
CMU と University of Pennsylvania のチームは 2026年5月26日公開の記事で、熱力学法則を破らない粗視化ダイナミクス学習フレームワークを紹介しました。 粗視化で落としてしまいがちなエントロピーや散逸の扱いを、モデル構造側に組み込む設計が主題で、polymer informatics や coarse-graining に近い話題です。
紹介記事によると、学習実装は PyTorch、推論側は LAMMPS 実装が公開されており、大規模粒子数での利用も視野に入っています。
参考: Phys.org
OpenAaaS: 分散型のMI研究基盤を提案
arXiv では 2026年5月13日、OpenAaaS: An Open Agent-as-a-Service Framework for Distributed Materials-Informatics Research が公開されました。 MIの研究基盤として、複数機関のデータや計算資源をまたぐ分散 Agent-as-a-Service 構成を提案しており、中心になる考え方は code flows, data stays still です。
材料データを一か所に集約するよりも、データ主権を保ったまま近接実行する設計を前面に出している点が特徴です。
参考: arXiv
Lumina: マルチスケール材料データを統合する Python 基盤
arXiv では 2026年5月20日、Lumina: An AI-Augmented Multiscale Material Informatics Framework for Extreme Aero-Chemo-Thermo-Mechanical Regimes が公開されました。 Lumina は、原子スケールの計算データからマクロ側の実験記録までを一つのリポジトリで扱う、Python ベースのMI基盤として提案されています。
論文概要では、階層的な XML ベースのスキーマ、スキーマ非依存のパラメータ抽出、自然言語問い合わせを支える会話型 AI 補助まで含めた構成になっています。材料データ基盤と AI 補助検索をどう一体化するかを見る題材です。
参考: arXiv
ツール/基盤ソフト更新
Matlantis: AIエージェント連携機能を提供開始
Matlantis は 2026年5月27日、AIエージェント連携機能の提供開始を発表しました。 対話型 AI エージェントである Claude Code や Codex を Matlantis のターミナル環境で扱うための連携機能で、自然言語の指示からシミュレーションコードの作成や編集を進められるようにする構想です。
あわせて、Matlantis 固有の機能やワークフローを AI エージェントに参照させるための Skills も GitHub で公開されています。計算化学や Python コード記述のハードルを下げつつ、実験系研究者から計算化学研究者、研究マネジメント層まで対象を広げようとしている点が、今回の発表の大きなポイントです。
参考: Matlantis ニュース
matgl v4.0.0: PyG への一本化と JAX 推論バックエンド追加
matgl は 2026年5月24日、v4.0.0 を公開しました。 今回の更新では DGL バックエンドが削除され、PyTorch Geometric 系へ一本化されています。加えて、TensorNet と QET に対する experimental な JAX 推論バックエンドが追加され、MD や構造緩和の内側ループ高速化を狙える構成になりました。
材料GNNやMLIPの運用では、バックエンド移行の有無がそのまま既存コードの修正範囲に効くため、今週の更新の中では影響の大きい部類です。
参考: matgl v4.0.0
matgl v4.0.1: 中間特徴を feature_dict で取得できるように整理
matgl は 2026年5月26日、v4.0.1 を公開しました。 MatGLModel の各サブクラスで、中間特徴を model.feature_dict から参照できるようになり、従来の return_all_layer_output や return_features 系の引数は非推奨化されました。
モデル内部の表現を解析したい場面や、特徴抽出を前提にした検証コードでは追従が必要になりやすい更新です。
参考: matgl v4.0.1
matcalc v0.5.1: matgl 側の整理に追従する CI 更新
matcalc は 2026年5月28日、v0.5.1 を公開しました。 今回の内容は主に CI 整備で、dgl==2.4.0 の手動インストールを各 workflow から外し、matgl が自前でバックエンドを解決する前提へ合わせています。
ライブラリ本体の新機能追加ではありませんが、周辺ツールも PyG 前提の構成へ寄ってきた流れを確認できる更新です。
参考: matcalc v0.5.1
現在受付中のセミナー・学会情報
2026年5月30日 時点で、開催日が今後3か月以内にあるイベント情報を掲載します。
NIMS Open House 2026
- 開催日: 2026年5月31日(日) 10:00-16:00
- 主催: NIMS
- メモ: 材料科学の研究現場を一般公開するイベントで、研究室公開や研究者との接点を持ちやすい導線です。
日本コンピュータ化学会 2026年春季年会
- 開催日: 2026年6月4日(木)- 6月5日(金)
- 開催形式: ハイブリッド
- 参加案内: 当日参加可
- メモ: 計算化学寄りの年会ですが、MI と近い話題を拾いやすいイベントです。
参考: SCCJ 2026年春季年会
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