今回は、2026年5月に確認できたMI関連トピックをまとめます。 企業・研究機関の動向、研究・論文、ツール更新、セミナー・学会情報に分けて整理しました。
今月の要点
- IBM、Cleveland Clinic、RIKEN が量子計算とスーパーコンピュータを組み合わせ、最大 12,635 原子のタンパク質系を扱ったと 2026年5月5日に発表しました。
- IBM Research は 2026年5月7日、Q-CTRL の事例として、材料シミュレーションを量子ワークフローで約2分に短縮したケースを紹介しました。
- SCM は 2026年5月12日、AMS2026 を公開し、MACE、UMA、eSEN などの次世代MLポテンシャルや VASP 連携、active learning 系の強化を打ち出しました。
企業・研究機関の動向
IBM / Cleveland Clinic / RIKEN: 12,635原子のタンパク質系を量子計算で扱った
IBM Newsroom は 2026年5月5日、Cleveland Clinic、RIKEN、IBM のチームが IBM 量子コンピュータとスーパーコンピュータを組み合わせ、最大 12,635 原子のタンパク質複合体系をシミュレーションしたと発表しました。 量子ビット側だけで全部解く話ではなく、重い一部を量子計算に切り出して古典HPCとつなぐ、いわゆる quantum-centric supercomputing の具体例として整理できます。
参考: IBM Newsroom
IBM Research: 量子計算を使った実材料シミュレーションの「実務時間」短縮を強調
IBM Research は 2026年5月7日公開の記事で、Q-CTRL が IBM Quantum Platform を使い、最大60電子を含む材料シミュレーションを約2分で実行し、古典法では約100時間かかる計算に対して 1% 以内の精度を示したと紹介しました。 量子材料計算の話は概念実証で終わりがちですが、今回は「実務上の所要時間」という形で打ち出している点が特徴です。
研究・論文
npj Computational Materials: 結晶生成に対する symmetry-aware Bayesian flow network
npj Computational Materials では 2026年5月19日、Symmetry-aware Bayesian flow networks for crystal generation が公開されました。 結晶生成モデルで空間群分布をより自然に扱うことを狙ったもので、結晶構造生成を「とりあえず出す」から「材料らしい制約を保って出す」方向へ寄せる研究として読めます。
結晶生成モデルで、材料探索上重要な対称性を先に扱おうとしている点が特徴です。
参考: npj Computational Materials
Nature Machine Intelligence: foundation MLIP の表現を比較しやすくする試み
Nature Machine Intelligence では 2026年5月7日、Platonic representation of foundation machine learning interatomic potentials が公開されました。 MACE などを含む foundation MLIP の潜在表現が互換でない問題に対し、異なるモデル間で化学環境表現を比較・整列しやすくする考え方を示しています。
異なるMLIP間で表現を比較しやすくする方向の研究として読めます。
参考: Nature Machine Intelligence
Nature Reviews Materials: 閉ループ自動実験が perovskite 最適化を押し進める
Nature Reviews Materials では 2026年5月11日、A closed-loop automated lab boosts perovskite performance という research highlight が公開されました。 機械学習による分子設計とロボット実験、さらに Bayesian optimization をつないだ閉ループ系で、新しいパッシベーション分子探索と再現性あるデバイス作製を両立させた点が紹介されています。
機械学習による設計とロボット実験、Bayesian optimization をつないだ閉ループ系の紹介です。
ツール/基盤ソフト更新
ASE 3.28.0 リリース
Atomic Simulation Environment のドキュメントトップでは、ASE version 3.28.0 released (17 March 2026) と案内されています。 3月のOSS更新を入れる場合は、RDKit だけでなく ASE 側の更新も並べておく構成が自然です。
参考: ASE
SCM AMS2026: MLポテンシャル、active learning、VASP連携が一段実務寄りに
SCM は 2026年5月12日、AMS2026: Expanded Chemical Coverage, Faster Workflows, Better Results を公開しました。 今回の更新では、eSEN、MACE、UMA といった次世代MLポテンシャル、VASP 連携、active learning、Python 自動化、MD 周りの強化がまとめて入っています。
新しいモデル追加だけでなく、材料計算ワークフロー全体の整備を含む更新です。
参考: SCM News
RDKit 2026.03.2: 派手ではないが前処理基盤として重要
RDKit は 2026年4月30日に 2026_03_2 (Q1 2026) Release を公開しました。 今回の主な変更には、tautomer canonicalization の高速化、tautomer-insensitive hash v2 の立体保持修正、UFF inversion gradient の不具合修正 などが含まれます。
参考: RDKit Releases
現在受付中のセミナー・学会情報
2026年5月23日 時点で、開催日が今後3か月以内にあるセミナー・学会情報を掲載します。 参加申込や出展申込につながる情報を中心にまとめました。
日本コンピュータ化学会: SCCJ講習会「マテリアルズ・インフォマティクス入門」
- 開催日: 2026年6月3日(水) 14:00-18:00
- 開催場所: 東京科学大学 大岡山キャンパス 南4号館3階 情報ネットワーク第1演習室
- 参加資格: SCCJ会員、東京科学大学在学生
- 参加費: 無料
- メモ: 書籍『マテリアルズ・インフォマティクス実践ハンドブック』を題材にした講義とハンズオンです。
参考: SCCJ講習会案内
日本コンピュータ化学会: 2026年春季年会
- 開催日: 2026年6月4日(木)- 6月5日(金)
- 開催場所: 東京科学大学 大岡山西9号館2階
- 開催形式: ハイブリッドオンライン
- 参加申込: 事前・直前登録は終了、当日参加可
- 企業展示: 申込締切は 2026年5月1日、1ブース 100,000円 / 2日間
- 参加費: 非会員一般 12,000円、協賛学会会員 7,000円、学生・シニア 7,000円
参考: SCCJ 2026年春季年会
CBI学会: 6月・7月の講演会
- 第472回
AI for Science:AIが加速する創薬・科学研究の新展開 - 開催日: 2026年6月19日(金)
- 開催形式: オンライン配信(Zoomウェビナー)
- 第473回
in silico ADMET予測のフロンティア - 開催日: 2026年7月27日(月)
- 開催形式: オンライン配信(Zoomウェビナー)
- 申込状況: 講演会スケジュール上で「★申し込み受付中」と案内
参考: CBI学会 講演会・セミナー
高分子学会: 2026年度 高分子学会講演会 26-1
- テーマ: 相分離液滴を基盤とするバイオマテリアル・デバイス開発
- 開催日: 2026年7月8日(水)
- 開催形式: オンライン
- 参加申込: 詳細・参加申込ページへの導線あり
参考: 高分子学会 講演会 26-1
日本化学会 近畿支部: 夏季の参加募集中イベント
- 第28回化学教育研究発表会
- 開催日: 2026年6月6日(土)
- 会場: 大阪教育大学天王寺キャンパス
- 2026年度近畿地区大学化学入試問題を巡る大学・高等学校交流会
- 開催日: 2026年7月3日(金)
- 会場: 大阪科学技術センター
- 化学系学生・スタッフ対象 甲種危険物取扱者試験 対策セミナー
- 開催日: 2026年7月30日(木)、31日(金)、8月3日(月)、4日(火)
- 開催形式: オンライン
参考: 日本化学会 近畿支部 イベント
日本金属学会: PRICM12
- 会議名: The 12th Pacific Rim International Conference on Advanced Materials and Processing (PRICM12)
- 開催日: 2026年8月9日(日)- 13日(木)
- 開催場所: Gold Coast Convention & Exhibition Centre, Australia
- 共催: 日本金属学会、韓国金属材料学会、中国金属学会、TMS など
- メモ: 材料・プロセシングの国際会議として、日本金属学会のイベント欄で案内されています。
参考: 日本金属学会 PRICM12
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