第一原理計算パッケージのQuantum ESPRESSOについて解説します。
概要
Quantum ESPRESSO(クオンタム エスプレッソ)は第一原理計算のパッケージです。擬ポテンシャル法と平面波基底に基づく電子状態計算を行い、多くの種類の計算を実行できる無償のプログラムです。なお、このプログラムにはGUIはありません。
基本となるDFT計算の機能はPWscf (pw.x) で、それを中心としてその他数多くのプログラムが含まれています。
Quantum ESPRESSOの公式ページはこちらです。
できること
Quantum ESPRESSOを使って計算できるものには以下のようなものがあります。
- 電子密度分布
- バンド構造
- 状態密度
- フォノン
- 構造最適化
- 第一原理MD
- 遷移状態計算
- NMR
- 光学特性の評価
- etc…
インストーラを展開すると各プログラムのディレクトリ内にexamples(q-e/PW/examplesなど)があるので、書き方が全く分からないような場合は参考になります。
また数は少ないですが、当サイトでもいくつか計算方法やテクニックの解説をしています。
導入方法
公式サイトではソースコードが配布されいます。ダウンロードには簡単なユーザ登録が必要ですが、gitが使える方はQEFのgithubやgitlabから入手することも可能です。LinuxやMacOSでのビルドを想定しており、Windows環境での利用はWSLでビルドされることが多いです。以前はWindows用の実行ファイルも配布されていましたが、今は配布されていません。
Windowsでの導入方法は以下の記事で解説しています。
またGPUコンパイルはこちらの記事で解説しています。
擬ポテンシャルファイルの入手
Quantum ESPRESSOで計算をするには、計算内で登場する元素の擬ポテンシャル(pseudopotential, PP)のファイルが必要です。ファイルの拡張子はUPF。擬ポテンシャルファイルにはPAW(Projector-Augmented Wave), US(Ultrasoft), NC(Norm-Conserving)の種類があり、計算によっては一部の種類の擬ポテンシャルファイルしか使用できないものがあります。
こちらのSSSP(Standard Solid State PP)のポテンシャルライブラリが推奨されているようです。一通りの元素のファイルが一括でダウンロードできます。ダウンロードボタンは[↓Pseudos]と書かれているところです。
また、Quantum ESPRESSO公式が配布している擬ポテンシャルファイルはこちらにあります。
各元素ごとに複数のファイルがあり、正直どれを選んだらいいのか分かりません。擬ポテンシャルの種類に応じて細かい命名規則でファイル名が決まっているので、欲しい種類のものが明確であればこちらから入手するのがいいです。
入力ファイルのキーワード
pw.xのキーワード一覧はこちらです。
このような形式で各プログラムの入力キーワードの解説ページがあります。公式のこちらのページから飛ぶことができます。
なお、このキーワード一覧だけを見ても入力ファイルの書き方は分かりません。インストーラを展開すると各プログラムのディレクトリ内にexamples(q-e/PW/examplesなど)があるので、そちらを参考にするのがお勧めです。
Quantum ESPRESSOのGUI環境
CUI上でコマンド操作で動かすほうが楽な場合もありますが、複雑な構造や大規模な構造を作る場合や結果を可視化する場合には専用のソフトを使うほうがいいです。Quantum ESPRESSOを動かすことができるGUIソフトには以下のようなものがあります。
- 無償
- BURAI(Satomichi Nishihara)
- ASE※Pythonモジュール
- 有償
その他GUIソフトや補助ツールも含め、Quantum ESPRESSO公式ページで多数紹介されています。
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