今回は、2026年6月28日から7月31日までに公開されたMI関連トピックをまとめます。NIMSとIBMによる材料研究基盤の構想、自律実験基盤、材料科学向けAIエージェントの研究に加え、Quantum ESPRESSO、LAMMPS、CP2Kなど主要ソフトウェアの更新が相次ぎました。
前回のニュースはこちらです。

7月の主なニュース
NIMSとIBMが次世代材料研究基盤の構築に向けて協業
NIMSとIBMは、NIMSの材料データや自動自律実験基盤と、IBMのAI・量子コンピューティング技術を組み合わせる協業に向けた覚書を締結しました。基盤モデル、LLM、エージェント技術の材料分野への応用、量子計算の活用、データ統合基盤の整備を検討します。
ソースURL: https://www.nims.go.jp/press/2026/07/202607010.html
Argonneが全固体電池材料の探索にAIエージェントを導入
米国のArgonne National Laboratoryは、全固体電池向け材料の探索にAIエージェントを使う取り組みを発表しました。文献や計算データを調べる処理をエージェントに分担させ、固体電解質候補の評価を進めます。
ソースURL: https://www.anl.gov/article/scientists-deploy-ai-agents-to-accelerate-discovery-of-new-materials
NC Stateが自律実験の共用基盤 SPEED を始動
North Carolina State Universityは、AI、ロボット、遠隔実験を統合する共用基盤 SPEED の構築に着手しました。米国立科学財団から4年間で2,000万ドルの支援を受け、触媒、半導体、光触媒を対象に、実験計画から検証までをつなぐ自律実験環境を整備します。
Quantum ESPRESSO 7.6を公開
Quantum ESPRESSO 7.6 では、分子結晶向けの vdW-DF3-mc、meta-GGA関連機能、USPP・PAWを用いた誘電関数計算などが追加されました。meta-GGAの応力、Raman係数、pw2wannier90、GPU版フォノン計算などに関する不具合も修正されています。
ソースURL: https://github.com/QEF/q-e/releases/tag/qe-7.6
企業・研究機関の動向
NIMSとIBM、生成AIを活用した材料研究基盤で協業
NIMSとIBMは、材料科学におけるAI活用基盤の構築を目指す覚書を締結しました。NIMSの材料データ基盤 MDPF や自動自律実験設備と、IBMのAI、量子コンピューティング、IBM Material DX を接続し、具体的な共同プロジェクトを検討します。
ソースURL: https://www.nims.go.jp/press/2026/07/202607010.html
alqem AIとマックス・プランク研究所が磁性材料探索で連携
alqem AIとマックス・プランク固体化学物理研究所は、レアアースを使わない磁性材料の探索を目的とする共同プロジェクトを発表しました。AIによる組成候補の提案と研究所での合成・評価を組み合わせ、探索結果を次の候補選定へ戻す反復型の研究を進めます。
ソースURL: https://www.eurekalert.org/news-releases/1135471
Argonneが全固体電池材料の探索にAIエージェントを導入
Argonne National Laboratoryは、複数のAIエージェントを使って全固体電池向け材料を探索する研究を発表しました。研究者が候補物質を調べる際の文献調査やデータ評価を分担させ、材料選定までの時間短縮を狙います。
ソースURL: https://www.anl.gov/article/scientists-deploy-ai-agents-to-accelerate-discovery-of-new-materials
NC Stateが自律実験の共用基盤 SPEED を構築
North Carolina State Universityは、AI、ロボット、計算手法を組み合わせる自律実験基盤 SPEED を構築します。実験装置、リアルタイムデータ、意思決定アルゴリズムを接続し、触媒、半導体、光触媒の探索を共用設備として支援する計画です。
研究・論文
LLMエージェントが結晶グラフニューラルネットワークを自律改良
MatBenchのバンドギャップ予測を対象に、汎用コーディングエージェントが結晶グラフニューラルネットワークを自律的に改良した研究が公開されました。外部事前学習を使わない条件で、比較対象となった17種類の専門家設計モデルを上回ったと報告しています。
ソースURL: https://arxiv.org/abs/2606.29717
材料科学論文の図を構造化した大規模データセット MatSciFig
MatMMExtract は、材料科学論文の複合図をパネル単位に分割し、説明文や分類ラベルを付けるオープンソース処理基盤です。14,810報のオープンアクセス論文から、180,571件の図と391,606組のパネル画像・テキスト対からなる MatSciFig を構築しました。
ソースURL: https://arxiv.org/abs/2606.29667
機械学習を用いてバルク強磁性準結晶を実現
機械学習による相分類を合金組成探索に利用し、急冷を必要としないバルク強磁性正二十面体準結晶を作製した研究が報告されました。近似結晶のデータから強磁性が現れやすい電子数条件を抽出し、5元系合金の組成設計に利用しています。
ソースURL: https://doi.org/10.1021/jacs.6c03748
MLIPとMinima Hopping法で材料界面の原子構造を予測
機械学習原子間ポテンシャルとMinima Hopping法を組み合わせ、材料界面の安定構造を探索する手法が報告されました。SrTiO3粒界で得られた構造は、計算に使用していない電子顕微鏡観察とも一致し、複雑な界面構造を予測できることを示しています。
ソースURL: https://doi.org/10.1038/s41524-026-02214-7
ツール・基盤ソフト更新
Quantum ESPRESSO 7.6
Quantum ESPRESSO 7.6 では、vdW-DF3-mc、LibXC経由のBEEF-vdW、meta-GGAと擬ポテンシャルに関する機能が追加されました。GPUオフロード用のCMake設定変更を含む互換性上の注意があり、既存環境を更新する際はビルド設定の再確認が必要です。
ソースURL: https://github.com/QEF/q-e/releases/tag/qe-7.6
LAMMPS 4 July 2026 feature release
7月4日版のLAMMPSは、通常より大規模なfeature releaseです。Gibbs Ensemble Monte Carlo、BAOAB Langevin積分器、ILVES拘束ソルバー、RuNNer機械学習ポテンシャル連携、KOKKOS・GPU関連の高速化などが追加されました。
ソースURL: https://github.com/lammps/lammps/releases/tag/patch_4Jul2026
CP2K 2026.2
CP2K 2026.2 では、k点を用いたDFT+U、波動関数外挿、k点対称性低減、ACEによる交換計算、定電位grand canonical SCFなどが追加されました。セル最適化やDOS・PDOSの入力仕様には互換性を壊す変更が含まれます。
ソースURL: https://github.com/cp2k/cp2k/releases/tag/v2026.2
VASP 6.6.1
VASP 6.6.1 では、3月公開の6.6.0に含まれていた、共線スピン分極meta-GGA計算の力が正しく計算されない重大な不具合が修正されました。公式には6.6.1への早急な更新、または6.6.0への修正パッチ適用が案内されています。
ソースURL: https://vasp.at/info/post/new-release-vasp-661/
AMS2026
AMS2026 では、eSEN、MACE、UMAなどの機械学習ポテンシャルが追加され、分子動力学、VASP連携、Python環境も拡張されました。ADFでは分光、励起状態、溶媒効果に関する機能が更新されています。
ソースURL: https://www.scm.com/news/ams2026-released/
Psi4 1.11
Psi4 1.11 では、DLPNO-CCSD、DLPNO-CCSD(T)、スカラー相対論近似ZORAなどが追加されました。Python 3.14とQCSchema v2への対応に伴い、Pydanticを含む複数の依存パッケージについて最低バージョンが変更されています。
ソースURL: https://github.com/psi4/psi4/releases/tag/v1.11
Wannier90 4.0.1
Wannier90 4.0.1 では、projectability disentanglement、スピンHall伝導度、ライブラリインターフェース、CMakeビルドなどが追加されました。ライセンスはGPLからLGPL v2.1へ変更されています。
ソースURL: https://github.com/wannier-developers/wannier90/releases/tag/v4.0.1
NequIP 0.19.0
NequIP 0.19.0 では、パッケージ済みモデルの内容確認、差分比較、更新、設定変更を行うコマンドが追加されました。TorchSim連携で非連続テンソルを渡した場合に力と応力が誤る可能性があった問題も修正されています。
ソースURL: https://github.com/mir-group/nequip/releases/tag/v0.19.0
MatGL 4.0.3
MatGL 4.0.3 では、TensorNetとM3GNetポテンシャルをLAMMPSから利用するためのCPU・Kokkos GPU連携が追加されました。学習済みモデルを再学習せずにMonte Carlo Dropoutで不確かさを推定する機能も利用できます。
ソースURL: https://github.com/materialyzeai/matgl/releases/tag/v4.0.3
atomate2 0.1.5
atomate2 0.1.5 では、TorchSimを使ったバッチワークフローが追加されました。NequIP、SevenNet、MACE、MatGLなど力場・機械学習ポテンシャル関連の依存パッケージも更新されています。
ソースURL: https://github.com/materialsproject/atomate2/releases/tag/v0.1.5
RDKit 2026.03.4
RDKit 2026.03.4 では、ETKDGの座標精密化、複数コンフォマーを用いたGaussian shape、Synthon部分構造検索の高速化などが追加されました。C++ APIには一部互換性を壊す変更が含まれますが、Python APIは該当変更の影響を受けません。
ソースURL: https://github.com/rdkit/rdkit/releases/tag/Release_2026_03_4
イベント情報
Matlantis User Conference 2026
Matlantisは、年次ユーザーイベント Matlantis User Conference 2026 を9月18日に東京駅・JPタワー ホール&カンファレンスで開催します。テーマは「AI for Scienceの最前線」で、ユーザーによる活用事例、研究開発プロセス、ポスターセッションなどが予定されています。
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